腰椎分離すべり症・腰椎分離症
(1)腰椎分離すべり症・腰椎分離症とは
「腰椎分離症」「腰椎分離すべり症」は、文字だけ見ると、「腰の骨が壊れてしまっている状態」というようなイメージがあるかもしれませんが、「腰椎分離症」とは、骨のある部分が切れてしまう(折れてしまう)状態のことです。そして、「腰椎分離すべり症」とは、文字通り腰の骨が「滑(すべ)ってズレてしっている状態のことです。では、もう少し詳しく、それぞれの状態を説明いたします。
- ◎腰椎分離症とは
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背骨(脊椎)の腰の部分には、腰椎とよばれる骨が積み木のように5つ積み重なっています。腰椎は、5つの骨が緩やかなカーブを呈しています。もし、カーブしていなくて、真っ直ぐな状態ですと、たとえばジャンプして着地した時に背骨にかかるショックをうまく吸収することができません。ですので、カーブしていることにより、体を支える「腰」として機能が保たれています。
腰椎の分離症とは、腰椎の関節を構成している付近の骨が切れてしまった状態をいいます。ハードなスポーツをするなどして、大きな負担が腰部にかかった場合などに起きる「疲労骨折」とよばれることが原因で骨が切れてしまうのではないかと言われています。
- ◎腰椎分離すべり症
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背骨(脊椎)は、頚椎(首の部分)、胸椎(胸の部分)、腰椎(腰の部分)、仙椎(骨盤の部分)の4つの部分から成り立っています。そして、腰椎は、5個の椎骨(ついこつ)という名前の骨が、積み木のように重なってできています。連なった5個の椎骨は、骨盤の部分の骨である仙骨の上に乗っています。
その仙骨は、前方へ少し傾いています。その傾いた仙骨の上に乗っているため、5個の椎骨は前方へ滑らないように、関節でしっかり支えられています。しかし、腰椎の分離によって不安定になり、すべってしまうことがあります。これが腰椎分離すべり症です。
(2)腰椎分離すべり症・腰椎分離症の症状の特徴
分離が生じると、これを修復しようとする生体反応が起こり、分離部には肥厚(ひこう)した骨や線維性組織が形成されます。これらの組織が、関節突起間部の真下を通る神経根を圧迫すると、下肢痛やしびれを生じます。特に、腰を後側屈すると分離部に圧迫が加わるため、痛みの程度が増強します。後方の突起群に分離が生じると構造的に脆弱(ぜいじゃく)になることから、前方の椎間板も変性しやすく、このため下位腰椎部に鈍痛を感じるようになります。特に、長時間立ち仕事をしたり重いものを持ったりなどして腰に負担がかかった後では鈍痛が増強します。
(3)腰椎分離すべり症・腰椎分離症の治療法
10歳代の分離症であれば、分離部の骨癒合(こつゆごう)を得るべく、まず腰椎軟性装具装着による局所安静治療を試み、定期的に単純X線写真で癒合状態の経過を追います。学校の体育授業は許可するものの、約6カ月間はスポーツクラブ活動を制限するか、時には禁止する必要があります。しかしこの間、分離のある椎骨の脆弱さを補強し、成長期の筋肉を鍛えるために腹筋、背筋の等尺(とうしゃく)運動は積極的に行います。これは、脊柱を過度に動かすことなく筋肉を鍛える方法で、腹筋の強化には仰向け姿勢で膝を曲げたままへそを見る程度に頭をもたげる運動、背筋の強化にはうつぶせ姿勢で頭が10cm程度上がる程度に背中を反らせる運動を行います。毎日、それぞれ10回程度行います。
20歳代を過ぎると、腰椎軟性装具を装着し腰部を安静に保っても分離部の骨癒合を得ることは不可能です。腰痛軽減を主目的として腰椎装具を用い、同時に内服治療、外用薬治療を行います。しかし、中年以降では腰椎全体の変性変化が進み分離部もしだいに安定化するため腰痛は軽減し、多くの方では腰椎装具は不要になります。もし、分離症や分離すべり症により下肢のしびれや痛みなどの神経根症状が出現し、保存的治療でも効果がない場合には手術治療を行います。それぞれの病態に応じて、分離部に植骨(しょくこつ)しスクリューやワイヤーを用いて固定し骨癒合を得る術式、分離部はそのままとして神経根のみ除圧する術式、分離部の後方部分を完全に切除し、神経根や馬尾を除圧した後に内固定器具を用いてすべりを矯正し椎間を固定する術式などがあります。
分離部の骨癒合を得るべく10歳代で腰椎軟性装具装着を試みた場合、早期の分離であれば骨癒合は望めますが、分離の程度が大きくなると骨は癒合せず分離状態が継続することになります。しかし、分離があっても激しい労作時や運動時以外腰痛は軽度であり、日常生活に支障をきたすことはまれであり、腰痛に対する一般的な鎮痛処置で対処できる方がほとんどです。
当商品は全ての方に効果があることを保証するものではありません。病気には、様々な症状・病状があり、効果には個人差があります。